2011年6月12日日曜日

競技ダンス実践テクニック「インナーマッスル」

ボールルームダンスを踊る上で重要な筋肉は「インナーマッスル」です。

腕にもりもりと力こぶを作る上腕二等筋や大胸筋といった身体の外側に見える筋肉を「アウターマッスル(外側の筋肉)」といい、大腰筋や腸骨筋といった、身体の奥にあり自分では意識のできない筋肉を「インナーマッスル(内側の筋肉)」といいます。

インナーマッスルは「深層筋」ともいうとおり、身体の深層部にあるために、普段はまったく意識もできませんし、それを意識で操作することもできません。

つまり、心臓や内臓の平滑筋と同様の存在である不随意筋の仲間といってもいいわけです。

インナーマッスルはほとんどが関節のまわりにある小さな筋繊維群ですので、それを鍛えてもアウターマッスルのようにもりもりと大きく肥大しませんが、アウターマッスルが爆発的な瞬発力を発することができる反面「持久力」がないのと対照的に、インナーマッスルの場合は爆発的な瞬発力はありませんが「持久力」という特徴を持つ筋肉です。

つまり、インナーマッスルはミトコンドリアが比較的少なくピルビン酸による瞬発的な収縮の可能な「速筋(白筋)繊維」よりも、ミトコンドリアに富んで酸素を利用した持続的な収縮の可能な「遅筋(赤筋)繊維」が多い構成であるということです。

インナーマッスルは姿勢保持筋ともいわれており、人間が「立つ」ということを可能にしている筋肉群でもあります。

筋肉に「持久力」がないと、一定の姿勢を維持することさえ困難になりますから、インナーマッスルはそのような構成になっているわけです。

つまり、人間の姿勢、バランスはこのインナーマッスルによって保たれているわけです。

この人間の「立つ」ということも含めたあらゆる「バランス」は「意識」で行っているわけではなく、インナーマッスルが脳と連携して勝手にやっています。

それで、このインナーマッスルが弱く、脳との連携が悪いと、ダンスでもっとも重要な「バランス」が保てないために、思うようなポスチャー、ポイズ、ムーブメントに繋がらず、常にアウトバランスで崩れた状態で踊るということになります。

また、いわゆるダンスにおける「柔らかさ」というのはこのインナーマッスルの強さとともに、その収縮にともなう間接の可動域に左右されます。

それで、ダンスを踊る上で必要なインナーマッスルを鍛えるには「ストレッチ」と「片足立ち」が有効です。

「ストレッチ」についてはすでに解説しておりますので、この項では「片足立ち」について解説します。

「片足立ち」は文字通り、片方の足を床から離して、もう一方の片足だけで立つことです。

もちろん、このときに、何かにつかまって立っては意味がありません。

片足で立ってバランスを保とうとすることによってインナーマッスルが鍛えられるわけです。

この「片足立ち」で1分30秒立っているだけで、ウォーキングを1時間以上したのと同様のインナーマッスルが鍛えられます。

しかし、これはあくまでも筋力およびバランス能力の強化ということに関しての効果でありますので、心肺機能強化は別の問題です。

ですから、片足1分30秒ずつで両足で3分あれば、ダンスにおけるインナーマッスルは強化されますので、実践的には、毎日、テレビを見ているときにでも、たった3分それを実行すればいいわけです。

また、姿勢保持筋でありますので、日々の習慣も大きな影響になりますので、短時間でも毎日の継続がその強化の条件になります。

これはホールドを作るということも、この姿勢保持筋であるインナーマッスルの姿勢保持の記憶に左右されますので、毎日1~2分程度の短時間でも鏡の前で正しいホールドを作ってそれを日々継続して、脳、筋繊維にそのホールドの状態を習慣として記憶させることが競技ダンスということを考えた場合に重要な練習法になります。

つまり、もりもりの筋肉であるアウターマッスルのように重い負荷をかけてハードトレーニングをするのではなく、インナーマッスルの場合は軽い負荷をかけることを日々の習慣としてそれを脳と筋肉繊維に記憶させることがそれを鍛えるということに繋がるわけです。

また、インナーマッスルは関節の周囲にあるために、遅筋の特徴である遅い収縮でも、そのストロークが短いために、結果的に小さな収縮で大きな可動域になりますので、「早く動く」ことに繋がる筋肉でもあります。

また、インナーマッスルはアウターマッスルの力を抜くということが即これ強化に繋がりますので、「力を抜く」ことから始まる、気功、太極拳などの動きを研究することにより、それを強化することもできます。

それで、アウターマッスルを構成する速筋が年齢とともに激減してしまうのに比較して、このインナーマッスルを構成する遅筋の量は年齢による減少が少なく、継続して鍛えていると、70歳以上になってもその80%以上が維持されるそうです。

これは、姿勢を保つための筋肉である遅筋が大きく減少してしまうと、立つことも歩くこともできなくなってしまうため、身体のメカニズムとして、使用していれば筋繊維が減少しないようになっているからです。

このように加齢とともに減少しないインナーマッスルがダンスに使う主な筋肉であることから、たとえば往年の全日本チャンピオンの伊藤明さんのように、激烈な運動能力を要求される全日本レベルの競技会で、10代20代の選手を凌駕して還暦ファイナリストという奇跡に近いことも可能であるわけです。

また、テニスプレーヤーのクルム伊達公子選手はピラティスなどのインナーマッスルトレーニングを取り入れて復活して、38歳で全日本を制し、さらに4大大会のひとつの全仏テニスで過去2年準優勝の強豪ディナラ・サフィナ選手に逆転勝ちして2回戦に進み、40歳を過ぎた現在も大活躍されています。

まあ、いつもいうことですが、我々中高年ダンサーは体力的にも年齢的にも練習量に限界があるわです。

ですから、身体のメカニズムを考えて効率的に練習を行わないと、定年後に始めた場合には、あっという間に10年20年が過ぎて、加齢による体力、能力の問題で昇級が望めなくなるということになりますので、残された時間を有効に使って、短時間で一番効果のあるメソッドを日々「継続」して実践しましょう。